※ この記事は、第2回人生100年社会デザインフォーラム(新川達郎教授講演、テーマ:「ソーシャル・イノベーションによるこれからの社会の展望~社会組織の革新のために」)から抜粋したものです。
これからの人生100年社会の中でどういうソーシャル・イノベーションを考えていけば良いのか、そしてこれからのソーシャル・イノベーションを実現するソーシャル・イノベーターをいかに養成していくのかと言ったことが、次の時代を作ることにも繋がっているのではないかと考えています。
人生100年社会の基本設計
人生100年社会の基本設計をどう考えるのかは非常に難しい。人生100年社会を「デザイン」するというのがこの財団の目的ですが、そのデザインの行き着いた姿や理想は今のところ具体的な姿形としては不確実なところが多々あろうかと思います。
この問題を乗り越えていった先に私たちはどういう社会を作っていくことができるのか。そこは「学びの社会」、あるいは「子供たちの目線」からの新たな社会づくりになりますが、次の問題としてそれを実現していくためのシナリオが、必ずしも明確ではないということがあります。
このように、遠い理想はあるのですが、それを具体的な姿として想定し、そしてそれに向けて実践的な工程表を作っていくところが非常に難しい、そういう状況にあるのだろうと思っています。
ただし、それを明確に定めていくことができた途端に、この財団の活動はある意味では制度化し、硬直化し、そして陳腐化していくのではないかと考えます。むしろ、「人が生きる」と言う事を起点にしたシナリオプランニング、要するに「やりながら考えていく、考えながらやり続けていく」というプロセスの中でシナリオが選択されていくというような、理想の追求の仕方もあるのではないかと思います。
しかしながら、こういう大変な作業をやっていくということを考えていった時に、それを担う担い手の方々には、やはり相当程度の能力が要求をされるのではないか。人生100年社会というのは子供からお年寄りまで皆が生きていく、そういう能力を身につけて行かなければならないと思います。その意味でのキャパシティビルディング、いわば自分自身の生き方にイノベーションを起こすような、そういう力をつけていくということが必要ですし、そのための学びの構造というのを子供たちからお年寄りまで含めて作り変えていくということが必要ではないかと思います。それを支えるような社会組織というのを考えていかなければならないのではないかと思います。
次世代ソーシャル・イノベーションに向けて
では、次の世代に向けてどういうソーシャル・イノベーションを今後展開していかなければならないのか。様々ある中、やはり公益的な目的をもった組織が、新たな事業の開発を進めて行かなければなりませんし、同時に市場の中でもビジネス化されていくことが求められます。今後の社会づくりに向けた公共部門での支援、公共部門の枠組み作りも同時に進んで行かなければ、当たり前のこととしてのソーシャル・イノベーションが起こっていかなくなるでしょう。いずれにしても、経済性や社会性、社会的構成の整備、そしてそれに加え環境の問題をきちんと踏まえ、これからの世代や社会のソーシャル・イノベーションを考えていかなければならないと思います。
人生100年社会を支えるソーシャル・イノベーターが今後どのようになるか非常に楽しみであり、これから作っていければ良いと思います。先ずは地域の社会的な課題を解決して、より良い社会の実現を目指していく、そういうイノベーター(①)を考えていく必要があるのではないでしょうか。また、高度なマネジメント能力を持った社会的な起業家でなければならない(②)。また、役所、企業、そして民間の各種団体、それぞれの異なる分野の人達を協力させることができ、その事を通じてソーシャル・イノベーションに寄与出来るような人材であり、セクターを超えて働くことができる、そういう人材が(③)求められると考えます。そして、その人材が実践能力だけではなくて、それを研究として高める力、研究として実践に活かしていくことができる起業家型の実践者、そして行動型の研究者だと考えます(④)。以上のことを踏まえたソーシャル・イノベーターを是非輩出していきたいと考えています。
人生100年社会のソーシャル・イノベーターの働き方
こうしたソーシャル・イノベーターは、おそらくこれからの社会の中で自分自身の問題意識に従い行動し、そしてコーディネート、プロデュースをして、地域問題を解決していくことでしょう。ソーシャル・イノベーターの基本的な定義でもありますが、このような人材が地域の公共問題、社会問題、経済問題の解決に取り組み、今後そういう社会を作り上げていくと考えています。