研究会 人と組織のあり方研究会~新しい社会における人の生き方と組織のあり方から企業変革を考える~

 日本価値創造ERM学会様(以下、JAVCERM)から「Unlearn」というテーマを題材に、代表理事牧野篤氏の「AAR循環」、「affordance から modified-affordance」の考え方を理解し、共感し、そこから人、組織に落とし込み、実践するための議論と実践検討を行います。新しい人生100年社会を見据えた、人・組織のあり方の研究(勉強)を目的とします。

「人と組織のあり方研究会」研究会の概要

研究会を通した問題認識の再確認

人材の流動化の流れはもう不可逆→「永年勤続」「滅私奉公」はやがて昔話に

個人:流動化が当たり前の時代に、個人としていかに生きるかを常に考え、選択し続ける時代に

  • 専門性を磨き、複数社を渡り歩き、Credentialをバージョンアップし続ける生き方
  • 苛烈な競争を避け、地方で自身の価値観と家族との時間を大切にする生き方
  • オンラインを駆使して、地方にいながら大企業の仕事をやる生き方
  • 社会問題解決/社会変革を事業を通じて実現する生き方  等々

企業:流動化を前提として、有為の人材から積極的に選ばれる会社に

  • 磁力のある「パーパス」ステートメントがまず絶対に必要
  • 社会問題に対するセンシティビティ、運動神経、実行力、人材を磨く努力
  • 成長を実感できる業務機会、仲間、教育訓練の仕組みを整える
  • トップ、役員、取締役会等々統治する側の見識、情報発信が可視化されなければならない  等々

こうした時代認識を前提にすれば・・・

  • 企業が担う人材育成、人材開発は、従来の個社に閉じた社員教育の視座を超えて、社会資本の一部としての公益性やミッション性を帯びるのではないか

  ⇒企業間連携、他の社会資本との連携(大学等)

  • 企業と個人双方にとって互恵的な人材育成/開発のメニューのあり方があるのではないか。

まとめ

企業は、やりがいを持った個人を活かすための「環境づくり」が重要になる

 変化の激しいビジネス環境を企業が生き延びるためには、やりがいを持った従業員が重要だと言われるが、従業員の好きなようにさせればやりがいになるというのは違うのではないか。

 企業は従業員が好きだと思える事を作ることにも責任を持たないといけない存在になっており、単に従業員に考えろというだけでなく、やりたいことが出てくる環境づくりも重要である。

 企業が掲げたパーパスと自分のやりたいことを重ねてやりがいを作るという考え方は悪くないけれど、はじめから固定された「やりたいこと」があるのではなくて企業とのかかわりの中で形成されてくるものの方が多いはず。

 その意味で、企業が地方大学と繋がり、地域経済との関係性を企業内に持ち込み、従業員にとってやりがいのベースとなる環境を作ることは意義がある。

 変化が激しい環境下では企業にとって従業員の多様性が重要であるということも言われるが、これも普通は女性登用とか人種バランスとかの話で終わってしまって経営にインパクトも持つほどの議論がなされることは少ない。

 これに対して多様性というものをやりがいとかすきなことという視点で見れば、多様な「やりたいこと」が集まる場所、多様な「やりがい」が集まる場所として企業にとっての多様性をやりがい論と同じ枠で考えることができるようになる。

従業員の自発性が重視され、環境に対して開かれているというような経営を

 企業と従業員の関係性が、これまでの「依存関係」から「共存関係」になるというのは新しい見方である。企業から給料をもらって企業から奪い取ろうという姿勢ばかりの従業員では企業組織が壊れていく、企業側も従業員を使い倒そうという発想では共存関係は生まれない。「やりたいこと」が集まることを人と組織の関係性という観点で表現すると「共存関係」となるのかも。

 従業員がやりたいことややりがいのあることを持てる環境というのは、企業がどのような条件を満たせば実現できるのか考える価値があるテーマである。社長の意識改革もその条件の一つではあるが、もっと経営論的にあるいは組織論的に問題を捉えて整理する価値があるのではないか。研究会ではすぐに社長はこうあるべきという話に帰着させ過ぎた感がある。例えば、社会に開かれていて(オープン性)、組織内の透明性が高く(透明性)、の2条件は従業員が企業を通して社会とどのような関係性を持てるかについて予測可能とするので重要な感じがする。

 また、やりたいことが集まっても邪魔し合わないように「多様性」が保持できることも重要な要件になるし、安心して違う意見を言えるような「心理的安全性」も重要である。また、組織の柔軟性とか組織としての学習能力のようなコンセプトもこの文脈でどう位置付けられるのか考える価値がある。

 「短期的な成果を求めると組織の多様性が失われて活力が低下する」、「各自が専門性に分化していく世の中において、それらが多様性を保った生態系として存在できることが重要」、「学習するという事自体がやる気に繋がる行為である」ことから、従来型の経営管理とは違って、多様性が保たれるほどに緩く管理されており、学習という要素がビルトインされていて、短期的で人工的な目標に縛られず、従業員の自発性が重視され、環境に対して開かれているというような経営が求められる。